三位一体主日後第２２主日
｜ 三位一体主日後第２１主日｜教会暦とバッハの声楽曲｜宗教改革記念日 ｜ |
| BWV89 | エフライムよ、われ汝をいかにせん |
| BWV115 | わが心よ、準備せよ |
| BWV89 | Was soll ich aus dir machen, Ephraim? エフライムよ、われ汝をいかにせん |
||
| 初演 | 1723.10.24 ライプツィヒ | ||
| 編成 | Soli: SAB | Chor: SATB | Corno da caccia, Oboe I/II, Violino I/II, Viola, Continuo |
| 歌詞 | 作者不詳 | ||
| 福音書章句 | マタイによる福音書 18,23-35 | ||
| 書簡章句 | フィリピの信徒への手紙 1,3-11 | ||
| 概説 | アリアに始まり、合唱は最後の短いコラールのみの小編成のカンタータです。弦楽器以外のパートも最初はオーボエのみでしたが、バッハ自身の手によりコルノ・ダ・カッチャ（ホルン）のパート譜が付け加えられた形で伝承されています。 再演されたという確かな記録はなく、用紙の状態などから見てもホルンパートは初演の直前に加えられた可能性が高いようです。 当日の福音書章句は、自分だけ赦してもらって仲間を赦さない家来のたとえを引き、不実なこの世に対する神の処罰を警告しています。最初のアリアでは旧約聖書から題材を取り、アドマやツェボイム（創世記第１４章に出てくる、ソドムやゴモラと同盟を結んでいた町）のように滅ぼされるべきではないかと問いかけます。一区切りつくたびにフェルマータで流れを止める書法は、まるで神も悩んでいるかのようです。 第２曲のレシタティーヴォも、「神は当然報復されてよいはずである」と追い打ちをかけ、第３曲のアリアに至っては「報復が始まる」といよいよ迫ってきた神の報復を示して不安を煽ります。 しかしここで転機が訪れ、ソプラノのレシタティーヴォでは「不和と訣別しよう、イエスの血が全て帳消しにしてくれる」と第５曲のアリアではイエスによって救われた喜びを舞曲調の明るい旋律に乗せて歌います。最後は、イエスによって罪に打ち勝った喜びのコラールで締めくくられます。 |
||
| 感想など | 最終的には救われるカンタータなのですが、気分転換のタイミングが他の曲よりも後ろにあるようで、全体的に重苦しい雰囲気です。ソプラノのアリアでやっと明るさが戻ってきます。 ３種類の全集とも、それぞれ良い演奏です。テルデック（レオンハルト）盤のソプラノは、他の盤に較べると健闘しているように聞こえますがＢＣＪやコープマンに較べるとやはり少し安定しません。ＢＣＪは最初のバスが甘い声で柔らかく歌っているために歌詞を読まないと怒りの音楽であることが伝わりにくいようです。 感想は雑感の方にも書いています。２００２年初めの文章ですが、状況はますます悪くなっているように思います。 |
||
| 曲名 | 編成 | 演奏時間 | |||
| TEL | BCJ | TK | |||
| 1 | Was soll ich aus dir machen, Ephraim? | Aria(B) | 4'28 | 3'31 | 4'00 |
| 2 | Ja, freilich sollte Gott | Recitativo(B) | 0'42 | 0'48 | 0'51 |
| 3 | Ein unbarmheziges Gerichte | Aria(A) | 2'35 | 2'31 | 2'43 |
| 4 | Wohlan! mein Herze legt Zorn | Recitativo(A) | 1'07 | 1'09 | 1'10 |
| 5 | Gerechter Gott, ach rechnest du? | Aria(S) | 2'53 | 2'15 | 1'59 |
| 6 | Mir mangelt zwar sehr viel | Choral(SATB) | 0'40 | 0'46 | 0'48 |
| 演奏時間 | 12'25 | 11'08 | 11'31 | ||
| BWV115 | Mache dich, mein Seele, bereit わが心よ、準備せよ |
||
| 初演 | 1724.11.5 ライプツィヒ | ||
| 編成 | Soli: SAB | Chor: SATB | Corno, Flauto traverso, Oboe d'amore, Violoncello piccolo, Violino I/II, Viola, Continuo |
| 歌詞 | 作者不詳 | ||
| 福音書章句 | マタイによる福音書 18,23-35 | ||
| 書簡章句 | フィリピの信徒への手紙 1,3-11 | ||
| 概説 | 「目覚めて備えよ」というコラール・カンタータですが、「仲間を許さない人は、神もこれを赦さない」という当日の福音書章句とのつながりは結局よくわかりませんでした。「常日頃から人を赦して備えておけ」ということでしょうか。 木管も加わった曲調はそれほど厳しいものではありません。冒頭合唱などは、「サタンの奸計にかからないように、目を覚まして祈り求めよ」という歌詞を知らずに聴くと、はずむリズムやフルートの音型からむしろ楽しげな内容を想像してしまいます。 ２曲の女声アリアは、どちらもゆったりとしたテンポで「眠らずに祈り求めよ」と歌います。まどろみを表現したといわれるシチリアーノ風の第２曲では「突然刑罰が下される」という歌詞にいきなりアレグロの楽節が割り振られて驚きます。 最後の簡素な４声コラールも同様に「神の裁きの時は遠くない、目を覚まして祈れ」と歌って締めくくります。 全体としてはあまり明確なストーリーはなく、悔い改めて祈れというメッセージを強く感じる作品に仕上がっています。 |
||
| 感想など | 私の感じた違和感は、もしかするとヨーロッパの現役演奏家も同じように思っているのかもしれません。この歌詞の内容と音楽表現をどう一致させていくのか消化不良のままとにかく勢いで演奏してしまったような印象を受けました。 テルデック（アーノンクール）盤は、他の録音に比べずいぶん正統派というかすっきりした演奏です。すこしスタッカートがきつかったりアクセントが目立ったりしますが、落ち着いて聴ける良い演奏です。第４曲ソプラノのアリアはちょっと音程と発音が不安定ですがボーイソプラノが好きな人ならば許容範囲かもしれません。 コープマン盤は、どこをとってもうまくまとまっている演奏です。合唱、合奏、ソロとも安定していて、即興もいろいろ取り入れていて面白く、今のところこれが一番おすすめ。 リヒター盤は、思いの外軽快な冒頭合唱に引きつけられますが、それに続くアリアが思い入れたっぷりで全体としては一世代前の演奏という感じ。 レウシンク盤はソロが少し軽すぎの印象です。でも冒頭合唱はしっかりした演奏で健闘しています。 |
||
| 曲名 | 編成 | 演奏時間 | ||||
| TEL | TK | KR | PJL | |||
| 1 | Mache dich, mein Seele, bereit | Chor(SATB) | 4'27 | 4'01 | 3'56 | 4'12 |
| 2 | Ach, unschläfrige Seele | Aria(A) | 8'52 | 8'36 | 9'05 | 8'19 |
| 3 | Gott, so vor deine Seele wacht | Recitativo(B) | 0'58 | 1'11 | 1'28 | 1'15 |
| 4 | Bete aber auch dabei | Aria(S) | 5'43 | 6'52 | 7'44 | 5'14 |
| 5 | Er sehnet sich nach unserm Schreiben | Recitativo(T) | 0'55 | 0'47 | 1'03 | 0'52 |
| 6 | Drum so läßt uns immerdar | Choral(SATB) | 0'56 | 0'54 | 0'55 | 0'59 |
| 演奏時間 | 21'51 | 22'24 | 24'11 | 20'51 | ||
| マタイによる福音書 18,23-35 |
| 「仲間を赦さない家来」のたとえ そこで、天の国は次のようにたとえられる。ある王が、家来たちに貸した金の決済をしようとした。 決済し始めたところ、一万タラントン借金している家来が、王の前に連れてこられた。 しかし、返済できなかったので、主君はこの家来に、自分も妻も子も、また持ち物も全部売って返済するように命じた。 家来はひれ伏し、『どうか待ってください。きっと全部お返しします』としきりに願った。 その家来の主君は憐れに思って、彼を赦し、その借金を帳消しにしてやった。 ところが、この家来は外に出て、自分に百デナリオンの借金をしている仲間に出会うと、捕まえて首を絞め、『借金を返せ』と言った。 仲間はひれ伏して、『どうか待ってくれ。返すから』としきりに頼んだ。 しかし、承知せず、その中間を引っぱって行き、借金を返すまでと牢に入れた。 仲間たちは、事の次第を見て非常に心を痛め、主君の前に出て事件を残らず告げた。 そこで、主君はその家来を呼びつけて言った。『不届きな家来だ。お前が頼んだから、借金を全部帳消しにしてやったのだ。 私がお前を憐れんでやったように、お前も自分の仲間を憐れんでやるべきではなかったか。』 そして、主君は怒って、借金をすっかり返済するまでと、家来を牢役人に引き渡した。 あなたがたの一人一人が、心から兄弟を赦さないなら、わたしの天の父もあなたがたに同じようになさるであろう。」 |
| フィリピの信徒への手紙 1,3-11 |
| フィリピの信徒のための祈り わたしは、あなたがたのことを思い起こす度に、わたしの神に感謝し、 あなたがた一同のために祈る度に、いつも喜びをもって祈っています。 それは、あなたがたが最初の日から今日まで、福音にあずかっているからです。 あなたがたの中で善い業を始められた方が、キリスト・イエスの日までに、その業を成し遂げてくださると、わたしは確信しています。 わたしがあなたがた一同についてこのように考えるのは、当然です。というのは、監禁されているときも、福音を弁明し立証するときも、あなたがた一同のことを、共に恵みにあずかる者と思って、心に留めているからです。 わたしが、キリスト・イエスの愛の心で、あなたがた一同のことをどれほど思っているかは、神が証ししてくださいます。 わたしは、こう祈ります。知る力と見抜く力とを身につけて、あなたがたの愛がますます豊かになり、 本当に重要なことを見分けられるように。そして、キリストの日に備えて、清い者、とがめられるところのない者となり、イエス・キリストによって与えられる義の実をあふれるほどに受けて、神の栄光と誉れとをたたえることができるように。 |
このページの最初に戻る
バッハハウス玄関に戻る