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ディートリヒ・ブクステフーデ(c.1637〜1707)は、生まれたのは当時デンマークが統治していたホルシュタイン公国のオルデスロー(現ドイツ領のバート・オルデスロー)またはヘルシングボリ(現スウェーデン領、ブクステフーデ誕生の頃はデンマーク領)といわれていますが、父親でオルガニストのヨハネスは1632年〜33年にオルデスローからヘルシングボリに引っ越しており、ディートリヒの生年がはっきりしないので確定はできませんがおそらくヘルシングボリではないかとのこと。 幼少期の記録はほとんどありません。1658年に父も勤めたヘルシングボリのマリア教会のオルガニストに就任しますが、向かい岸のヘルシンゲア(現デンマーク領)とともに交通の要衝であったこの周辺はデンマークとスウェーデンの勢力争いに巻き込まれていたところで、ちょうどほぼ同じ時に通行税の諍いが元でヘルシングボリはスウェーデンに占領され、正式に割譲されてしまいました。ブクステフーデはついこの間までの敵国の指導者を歓迎する音楽を演奏させられることになりますが、その2年後の1660年にデンマーク側のヘルシンゲアにあるマリア教会に転職しています。古地図をジャケットにあしらったルター派ミサ曲のページもご覧ください。 スウェーデンとの関係は必ずしも悪いことばかりではなく、ストックホルムで宮廷楽長・オルガニストをしていた10歳ほど年長のグスタフ・デューベンによるコレクションによってブクステフーデのかなりの作品が残されました。連作カンタータ「われらがイエスの四肢」はデューベンに名指しで贈られており、ストックホルムからの注文であった可能性も言われています。 その後の1668年にはリューベックのマリア教会のオルガニストに就任し、オルガン演奏や「夕べの音楽」の指揮で大きな業績を残して、亡くなるまでそこでオルガニストとして活躍しました。フランツ・トゥンダーが始めてブクステフーデが引き継いだ「夕べの音楽(アーベント・ムジーク)」と呼ばれた教会での演奏会は大変な好評を博し、ヨーロッパ各地から訪れる人が絶えませんでした。アルンシュタットから若きバッハもやってきて懲罰覚悟で長逗留し大変有意義な時間を過ごしたのはご存じの通りで、リューベックとアルンシュタットのページにも少し関連記事を書いています。 ブクステフーデはバッハ以前の最大のオルガニストの一人という評価がすでに定着しています。オルガン作品全集についてはドイツ・バロックのオルガン作品のページにも載せました。声楽曲も上記デューベン・コレクションを中心に100曲以上が現存しており、オルガン曲と共通する幻想的で情熱的な曲想で北部ドイツに名声をとどろかせました。バッハの初期カンタータには、歌詞を短い楽節に分割してそれぞれにふさわしい楽想を展開していくブクステフーデの教会コンチェルト様式からの多大な影響が見られます。 2007年の没後300周年を控え、その3年前の2004年にリューベックを拠点として国際ブクステフーデ協会が設立されました。目的は「ディートリヒ・ブクステフーデの音楽の育成、ならびにブクステフーデの人生、仕事、文化環境に関する知識の普及とさらなる研究」ということで、ブクステフーデが活躍した他の街とも連携してコンサートやイベント、楽器や楽譜の管理などの活動をしています。会長はトン・コープマンが務めていて、華麗で幻想的なブクステフーデと人なつこいコープマンの組み合わせはちょっと意外な気もしますが、ファンタジー豊かなオルガンの即興が得意なコープマンには実はぴったりかもしれません。 コープマンは、バッハのカンタータ全集の次のプロジェクトとして2005年からブクステフーデの作品を全て録音するという取り組みを始めて順次発売されていたのですが、全30枚というボリュームで世界初のブクステフーデ全集として完結しました。2014年に一つのパッケージにまとめられたボックスにはコープマンへのインタビューとドキュメンタリーが収められたDVD1枚がついていました。30枚のうち声楽曲は17枚を占めていて、全10巻で引き続き分売もされています。どの盤もコープマンの自由闊達な指揮と透明なアンサンブルで、ブクステフーデのファンタジーの世界を堪能させてくれます。 |
最終更新 2024.1.14 |
BIS BIS-CD-871 | ||||
Buxtehude; Membra Jesu Nostri 連作カンタータ「われらがイエスの四肢」 |
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鈴木雅明、バッハ・コレギウム・ジャパン | ||||
1 | Membra Jesu nostri われらがイエスの四肢 |
BuxWV75 | Buxtehude, Dieterich ディートリヒ・ブクステフーデ |
声楽曲 |
ERATO ECD75378 | ||||
Buxtehude Cantate "Membra Jesu nostri" | ||||
Ton Koopman,The Amsterdam Baroque Orch. | ||||
1 | Membra Jesu nostri われらがイエスの四肢 |
BuxWV75 | Buxtehude, Dieterich ディートリヒ・ブクステフーデ |
声楽曲 |
NAXOS 8.553787 | ||||
Buxtehude; Membra Jesu Nostri | ||||
D.Fasolis, Choir of Radio Svizzera, Lugano | ||||
1 | Membra Jesu Nostri
われらがイエスの四肢 |
BuxWV75 | Buxtehude, Dieterich ディートリヒ・ブクステフーデ |
声楽曲 |
CORO COR16082 | ||||
Buxtehude; Membra Jesu Nostri | ||||
H.Christophers, The Sixteen | ||||
1 | Membra Jesu Nostri
われらがイエスの四肢 |
BuxWV75 | Buxtehude, Dieterich ディートリヒ・ブクステフーデ |
声楽曲 |
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