マーシャルアーツ三部作
｜ アンサンブルクライス 第１６回定期演奏会｜サントリーホール オルガンレクチャーコンサート 「ウィーン音楽散歩 I」 ｜ |
| ２０１１年１１月２０日（日） １８：３０より、サントリーホールにて、今年のサントリーホールフェスティバルの最後を飾る「マーシャルアーツ三部作 映像付き演奏会」が開かれました。実はこの日はダブルヘッダーで、14時から非公開の招待客限定コンサートが同じプログラムで行われました。 現代中国を代表する作曲家・指揮者の譚盾（タン・ドゥン）氏が作曲を担当した３本の映画「英雄（HERO)」「グリーン・デスティニー」「女帝（エンペラー）」の音楽から、自身で協奏曲に編曲した作品が演奏されます。独奏はそれぞれアジアを代表する若手のトップの二人に、この作品の初演（上海万博にて）を担当した若手チェリストという豪華布陣です。いつも聞いたり演奏したりするバッハやモーツァルトの音楽とは違いますが、こんな機会はもうないかもしれないということで、がんばって参加しました。 私達が担当するのは、ピアノと合唱のための「女帝」協奏曲で、２０００年のショパンコンクールに１５年ぶりに1位で優勝（中国人では初）した天才ユンディ・リと共演です。 声楽パート譜には曲によってかけ声だけが書いてあったりして普段との違いに戸惑いますが、映画音楽として聞いてみると結構クラシックに近いきれいな曲（やはりどことなく中国風）だったりします。また映像付きということで、これは初めての経験です。今回は久しぶりに100人近いフルオーケストラで、合唱もだいぶ補強が入りました。普段は1挺しか入らないコントラバスも数挺林立し、チューバなど低音のブラスやハープも参加しています。何よりも印象深かったのはパーカッションで、バッハでは２台が普通のティンパニが、６台組のものが３セットくらいありました。他にもハンドドラムや「石」など、普段は目にしないようなものばかりです。打楽器は曲の中で非常に効果的に使われ深い印象を残しました。 女声は、これも初の試みとして中国語の歌詞に挑戦しました。二期会の中国人の講師の方に何度も特訓してもらい、最後は「発音もきれいなので、もっと大きく歌って構わない、お客さんに聞いてもらわないともったいない」と言ってもらえました。 これらの音楽が使われていた3本の映画は、中国の武侠映画として世界でも高い評価を得ているとのこと。普段映画は見ないので、もともとどんな物語かよくわかっていませんでした。でも直前にDVDを借りてみて、単なる娯楽映画ではない深い物語が描かれていることに気づきました。映像（特に色使い）はどの映画もとてもきれいでした。ストーリーが一番複雑で、でも登場人物の葛藤や為政者（征服者）の苦悩が浮き彫りになっていたのは最初の「英雄」でした。TVの予告編ではアクション映画としての印象しかなかったのですが、結構おもしろかったです。自分達が参加した「女帝」は、野心や欲望が描かれた一番どろどろした血みどろのシーンが多い作品。血しぶきがダメな人はダメかも。ちなみに私は諸星大二郎の漫画なども好きなので、古代中国のこの手の話も意外とすんなり入ってきます。 ちなみに邦題の「女帝」は本来はEmpressなのでエンペラーは訳としてはおかしいのですが「エンプレス」といわれてもすぐにはぴんとこないので仕方なかったのかもしれません。原題は「夜宴」でした。 譚盾さんは、笑福亭鶴瓶に似たおじさんでしたが、音楽や舞台に向けた姿勢は真剣そのもの。少し怖かったです。オーケストラと合唱というくくりではなく、スクリーンの映像まで含めた空間を一つの世界としてトータルに考えておられました。 実演では、クローズド公演もまあまあうまくいったのですが、夜の部では昼間よりさらにテンションが上がり、昼間は見られたライブの傷も修正され、そもそも多少の傷など押し流してしまうほどの迫力で、ほぼ満員のお客様にも堪能いただけたと思います。映像を映し出すスクリーンが空調の風で大きく揺れてしまったのが残念。譚盾さんは合唱団の並びや楽譜の持ち方もお客様から少しでも美しく見えるように気にされる方なので、これはもったいなかった。 新しい世界が堪能できました。とても貴重な経験になったと思います。 日時：２０１１年１１月２０日（日） １８：３０開演（一般公演） 会場： サントリーホール 大ホール 曲目： 譚盾 「マーシャルアーツ三部作」 指揮： 譚盾 ヴァイオリン： 五嶋龍 チェロ： アメデオ・チッケーゼ ピアノ： ユンディ・リ 管弦楽： 東京フィルハーモニー管弦楽団 明治学院バッハ・アカデミー合唱団／聖心女子大学グリークラブ／早稲田大学グリークラブ 最寄り駅： 南北線 六本木一丁目駅（3番出口）徒歩約5分、銀座線・南北線 溜池山王駅（13番出口）徒歩7〜10分、都営01系統バス（渋谷〜新橋）赤坂アークヒルズ前下車 チケット： S席 １４，０００円、 A席 １２，０００円、 B席 １０，０００円、 C席 ８，０００円 |
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